セルフメディケーション税制と医療費控除|分かれ目は病院代8.8万円

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セルフメディケーション税制と医療費控除|分かれ目は病院代8.8万円

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控除額の計算式・適用条件・選択の扱いは、国税庁タックスアンサーNo.1120・No.1122・No.1129・No.1131(いずれも令和8年4月1日現在法令等)によります。「病院代8万8,000円」の分かれ目と4つの家計の表は、国税庁の計算式を編集部が当てはめた計算値で、国税庁が公表した数字ではありません。実際の控除額は所得や保険金の補填額で変わるため、申告の前に確定申告書等作成コーナーか税務署でご確認ください。誤りを見つけた場合はご一報ください。確認のうえ、原則48時間以内に修正します。

ドラッグストアのレシートと、病院の領収書。どちらを集めて申告すれば税金が多く戻るのかは、病院代の合計で決まります。

市販薬の購入が10万円以下の家計なら、病院代など市販薬以外の医療費が年8万8,000円未満のときはセルフメディケーション税制、8万8,000円を超えるときは通常の医療費控除のほうが控除額は大きくなります。2つはどちらか一方しか使えず、申告したあとで乗り換えることもできません。

分かれ目の8万8,000円は、国税庁が示す2つの計算式を並べると出てくる数字です。所得が200万円未満の人は分かれ目が下がるので、その計算も載せました。

目次(クリックで該当セクションへ)
  1. 2つの控除は何がちがう?
  2. どっちが得?分かれ目は病院代8万8,000円
  3. 4つの家計で計算すると、どちらが大きい?
  4. 税金はいくら戻る?
  5. 申告したあとで乗り換えられる?
  6. よくある質問(FAQ)
  7. 忙しい人向け 記事のまとめ

2つの控除は何がちがう?

薬局・ドラッグストアの店舗のイラスト

通常の医療費控除は、1年間(1月1日〜12月31日)に払った医療費から10万円を引いた額が控除になります。セルフメディケーション税制は、対象の市販薬(スイッチOTC医薬品など)の購入額から1万2,000円を引いた額が控除になり、上限は8万8,000円です。どちらも本人だけでなく、生計を一にする配偶者や親族の分を合算できます。

項目通常の医療費控除セルフメディケーション税制
数える費用病院代・処方薬・治療のための市販薬など対象の市販薬(スイッチOTC医薬品など)だけ
差し引く額10万円(総所得金額等が200万円未満なら所得の5%)1万2,000円
控除の上限200万円8万8,000円
使える人の条件特になしその年に健康診断や予防接種などを受けていること

セルフメディケーション税制の対象になる市販薬は、購入時の領収書に対象商品である旨の表示があるのが目印です。品目の一覧は厚生労働省のホームページに載っています。

出典 セルフメディケーション税制による医療費控除額は、実際に支払った特定一般用医薬品等購入費の合計額(保険金などで補填される部分を除きます。)から12,000円を差し引いた金額(最高88,000円)です。 出典:国税庁 タックスアンサーNo.1129(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1129.htm)
博士、差し引く額が1万2,000円なら、セルフメディケーションのほうがいつも得に見えます。
そこが落とし穴じゃ。セルフメディケーションは市販薬しか数えられん。病院代がかさんだ年は、数えられる額そのものが小さくなってしまうのじゃよ。

どっちが得?分かれ目は病院代8万8,000円

治療のために買った市販薬は、通常の医療費控除にも数えられます。国税庁のタックスアンサーNo.1122は、風邪をひいたときの風邪薬のような「治療または療養に必要な医薬品の購入の対価」を医療費に含めています。以下の比較は、市販薬がどちらの制度でも数えられる前提です。

  1. 市販薬の購入額をA円、病院代など市販薬以外の医療費をB円とする
  2. 通常の医療費控除は「A+B−10万円」
  3. セルフメディケーション税制は「A−1万2,000円」(上限8万8,000円)

2つの式を比べると、Aは両方に入っているので打ち消し合います。残るのは「B−10万円」と「−1万2,000円」の比較で、Bが8万8,000円より小さければセルフメディケーション税制、大きければ通常の医療費控除のほうが控除額は大きくなります。ちょうど8万8,000円なら同じ額です。

所得が200万円未満の人は分かれ目が下がる 総所得金額等が200万円未満の人は、差し引く額が10万円ではなく所得の5%になります。たとえば総所得金額等150万円なら差し引く額は7万5,000円で、分かれ目は7万5,000円−1万2,000円=6万3,000円。病院代がこれより少なければセルフメディケーション税制が大きくなります。

もう1つの例外は、市販薬を10万円より多く買った年です。セルフメディケーション税制は8万8,000円で頭打ちになるので、その場合は「A+B−10万円」が8万8,000円を超えるかどうかで判断します。

4つの家計で計算すると、どちらが大きい?

領収書のイラスト

総所得金額等が200万円以上の家計を想定し、国税庁の計算式に当てはめた編集部の計算例です。保険金などで補填される額はないものとしています。

家計の例通常の医療費控除セルフメディケーション税制大きいほう
市販薬3万円・病院代2万円0円1万8,000円セルフメディケーション
市販薬5万円・病院代8万円3万円3万8,000円セルフメディケーション
市販薬3万円・病院代12万円5万円1万8,000円通常の医療費控除
市販薬12万円・病院代5万円7万円8万8,000円(上限)セルフメディケーション

見落としやすいのは2行目です。医療費の合計が13万円あり、10万円の壁を超えているので通常の医療費控除が使えます。それでも、病院代が8万円で分かれ目の8万8,000円に届かないため、セルフメディケーション税制のほうが8,000円大きくなります。「10万円を超えたから医療費控除」と決めてしまうと、この差を取りこぼすわけです。

税金はいくら戻る?

電卓のイラスト

控除は所得から差し引く仕組みなので、戻る税金は「控除額×税率」で見積もれます。所得税の税率が10%の人なら、控除額1万8,000円で所得税が1,800円、復興特別所得税(所得税額の2.1%)を含めて約1,838円。これに翌年度の住民税(標準税率10%)が1,800円下がる分が加わり、合計はおよそ3,600円です。

2行目の家計なら差は控除額で8,000円。同じ税率10%で計算すると、所得税と住民税を合わせて約1,600円の差になります。レシートを1年分集める手間と見比べて、申告するかどうかを決める材料にしてください。

会社員が医療費控除やセルフメディケーション税制を使うには、年末調整ではなく確定申告が必要です。申告書には「セルフメディケーション税制の明細書」または「医療費控除の明細書」を添付します。

申告したあとで乗り換えられる?

乗り換えはできません。国税庁のタックスアンサーNo.1131は、どちらかを選んで確定申告書を提出したあとに、更正の請求や修正申告で他方へ変更することはできないとしています。セルフメディケーション税制を選んだ年は、市販薬以外の医療費が10万円を超えていても、通常の医療費控除をあわせて受けることはできません。

税務署の建物のイラスト

セルフメディケーション税制には、もう1つ条件があります。その年に「一定の取組」を行っていることです。国税庁が挙げているのは次の5つで、会社の定期健康診断も含まれます。

  • 健康保険組合や市区町村国保などが実施する健康診査(人間ドック、各種健診など)
  • 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
  • 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
  • 勤務先で実施する定期健康診断
  • 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、特定保健指導

申告の前にやることは3つです。市販薬のレシートと病院の領収書を別々に合計する、病院代を8万8,000円(所得200万円未満なら自分の分かれ目)と比べる、健康診断や予防接種を受けたことが分かる書類を手元に置く。この順番で確かめてから、どちらの明細書を作るかを決めてください。

よくある質問(FAQ)

セルフメディケーション税制と医療費控除は、両方使えますか?
使えません。2つは選択適用で、どちらか一方だけです。国税庁のタックスアンサーNo.1131によると、選んで申告したあとに更正の請求や修正申告で変更することもできません。根拠:国税庁 タックスアンサーNo.1131。
どちらが得か、簡単に見分ける方法はありますか?
市販薬の購入が10万円以下なら、病院代など市販薬以外の医療費が8万8,000円未満のときはセルフメディケーション税制、超えるときは通常の医療費控除のほうが控除額は大きくなります。国税庁の2つの計算式を並べて編集部が導いた目安で、総所得金額等が200万円未満の人は分かれ目が下がります。
セルフメディケーション税制の控除額はいくらまでですか?
対象の市販薬の購入額(保険金などで補填される部分を除く)から1万2,000円を引いた額で、上限は8万8,000円です。購入額が10万円に達すると上限に届きます。根拠:国税庁 タックスアンサーNo.1129。
会社の健康診断を受けていれば、セルフメディケーション税制を使えますか?
国税庁は「一定の取組」の1つとして、勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)を挙げています。ほかに、健康保険組合などの健康診査、予防接種、特定健康診査なども対象です。
ビタミン剤も通常の医療費控除に入りますか?
国税庁のタックスアンサーNo.1122は、病気の予防や健康増進のために用いられるビタミン剤などの購入代金は医療費にならないとしています。医療費になるのは、風邪薬のように治療または療養に必要な医薬品の購入代金です。根拠:国税庁 タックスアンサーNo.1122。
SUMMARY 忙しい人向け 記事のまとめ
  • 通常の医療費控除は「医療費−10万円」、セルフメディケーション税制は「対象の市販薬−1万2,000円(上限8万8,000円)」
  • 市販薬の購入が10万円以下なら、病院代が8万8,000円未満のときはセルフメディケーション税制が大きい
  • 医療費の合計が10万円を超えていても、病院代が8万8,000円未満ならセルフメディケーション税制のほうが大きいことがある
  • 総所得金額等が200万円未満の人は分かれ目が下がる(所得150万円なら6万3,000円)
  • 2つはどちらか一方だけ。申告したあとで乗り換えはできない
  • セルフメディケーション税制は、会社の定期健康診断など「一定の取組」を受けた年に限られる
レシートと領収書を、最初から別々の封筒に入れておけばいいんですね。
それでよい。見るのは病院代の封筒の合計だけじゃ。8万8,000円と比べれば、どちらの明細書を書くかは決まる。一度出したら選び直せんから、比べるのは申告の前じゃぞ。

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この記事の書き手

博士

博士(フクロウ博士) 著者

古風な口調で、初心者がつまずきやすい仕組みを噛み砕いて解説する。担当領域:FX・株式・税金・社会保険・ポイ活税務。

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クルミ 構成協力

オトクル編集部の20代ライター。投資・ポイ活未経験から、記事執筆を通じて知識を積み上げてきた読者代表。読者と同じ目線でつまずきポイントを言語化することを得意とする。担当領域:副業・ポイ活・クレカ・暮らしのお金。